義歯(入れ歯)

「入れ歯ってお年寄りがするものでしょ」――そう思っておられる方は多いのではないでしょうか。

確かに義歯(入れ歯)は、患者さんの年齢が高くなればなるほどニーズが強まってくるものです。

特に若い患者さんの場合、自分からしたいと思っている方は、決して多くないと思います。

しかし若い方に決して無縁のものではありません。

当院でも若い方に歯科治療した実績はあります。

入れ歯が若い方にも関係するのは、一体なぜなのでしょう?

年齢に関係なく使える汎用性

歯を失ってしまった場合、現実に多くの方が頼る方法はインプラントかブリッジ(架工義歯)です。

しかしインプラントやブリッジは、どんな方にでも使えるわけではありません。

例えばインプラントは、歯肉や骨に穴をあけて金属を差し込むので、骨が丈夫でないとできません。

また未成年の患者さんは、歯肉や骨がまだ成長しているので、とても実行するわけにはいきません。

またブリッジは、欠けている歯の両隣の歯を削り、それを支えにして歯をつなぐ手法です。

つまり、隣の歯が欠けていたり、炎症を起こしたりしている場合などには使えないのです。

その点、義歯は、歯が抜けた部分に「はめ込む」ので、どこかを傷つける心配がほぼありません。

つまり、周囲の歯や歯肉、骨などの状況に左右されることなく採用できるという特徴があります。

年齢に関係なくどのような方にも応用できる汎用性がある歯科治療なので、若い方にも無縁ではないのです。

どんな入れ歯があるの?

そもそも義歯(入れ歯)とは、樹脂などで作った人工歯肉に、プラスチックなどで作った人工歯を固定した器具で、歯1本1本ではなく、隣り合う複数の歯をまとめて1セットにします。

そしてその全体を、歯が抜けてしまった部分に装着します。

当院では主に2種類のものをご用意しています。

「歯肉」となる部分を、樹脂で作っている義歯(上写真。左が装着前、右が装着後)。

保険が適用され、義歯のなかでも比較的オーソドックスなタイプです。

また「歯肉」となる部分を、シリコンで作っている義歯(下写真。左が装着前、右が装着後)。

こちらは保険が適用されませんが、周囲の歯肉によくなじみやすく、着け心地も良好です。

知っておきたい義歯の特徴

義歯には、以下のような特徴があります。

①比較的安い

歯肉部分に樹脂を使った義歯は保険が適用され、型取りを含め、一基1万円~1万5,000円程度です。

歯肉部分にシリコンを使用して違和感が少ないタイプは、保険適用外ですが、これでも歯2~3本の場合で約10万円、歯4本以上の場合で約15万円という価格です。

一方で、インプラント治療では歯1本につき30~50万円程度することもよくあります。

②掃除しやすい

義歯は取り外して手に取ることができるので、歯磨きが簡単です。

どんな歯科治療をしても、歯周病などのリスクはあり、歯磨きの努力はいつも必要です。

その意味で、義歯は歯磨きがしやすく、努力次第では歯周病のリスクを減らしやすいのです。

③初めは違和感がある

痛みを感じる方は少ないですが、異物を装着するので、多くの方は初めは違和感を訴えられます。

インプラントが骨にがっちりと固定するのに比べると、義歯はどうしても動きやすいものです。

ただ時間がたつと、違和感は徐々に薄れていくという特徴もあります。

④強く噛めない

インプラント治療をした場合、元の歯があったのと同じ程度の強さで噛むことができます。

しかし入れ歯の場合、噛む力は、元の歯の3分の1程度に制約されます。

こんな患者さんがいらっしゃいました

10歳代女性。乳歯が抜けたあとに、通常なら生えてくるはずの永久歯が生えてきませんでした。

しかも歯も骨もまだ成長中の思春期の患者さんに、骨に金属を差し込むインプラントはできません。

そこで義歯を作りました。

また20歳代の男性は、10歳代の頃に奥歯を抜歯し、隣の奥歯を支えにしてブリッジをしていました。

ですが支えとなっていた隣の歯が重い虫歯となり、ブリッジをやめせざるを得なくなりました。

そしてこの方にも、義歯を作りました。

いずれも「仕方ない」という、どちらかというと重い空気がただよっていました。

そうした重いご決断だからこそ、私(院長)が時間をかけ、懇切丁寧にご説明し、歯科治療をいたします。

そのための手間暇は患者さんのために必要ですから、私も手間暇を惜しまず歯科治療に向き合っていきます。