痛みの少ない麻酔

歯科治療で痛みをおさえるためには、麻酔(局所麻酔)は不可欠の手段です。

もちろん、痛みを嫌がる患者さんにとっては、関心が非常に高いと思います。

しかし麻酔を打つには、注射が要ります。局所麻酔の場合、これは避けて通れません。

「注射」という言葉が出てきた時点で、抵抗を感じる患者さんがたくさんいらっしゃいます。

だからこそ当院では「できるだけ痛くないように」するための心遣いを大切にしています。

痛みを少なくするために

麻酔を打つのに最も大切なこと。それは何だと思いますか? 効き目の強い麻酔? 最新の器具?

それもありますが、最も大切なのは「丁寧に打つこと」です。

麻酔を打つのは、当たり前ですが歯科医師による手作業です。そしてどうしても注射がいります。

しかしあなたが患者さんで、もしこの注射に痛みを感じてしまったらどう思いますか?
 
「痛みをなくすための注射が、なぜこんなに痛いんだ!?」とお怒りになると思います。

また、注入された麻酔薬がひんやりと冷たかったら? おそらく背筋に寒気が走るでしょう。

麻酔は「ただ打つだけ」ならば、作業としては意外と簡単で、30秒もかけずに終わらせられます。

でもそれでは、患者さんを痛めつけることになってしまいます。

歯科医師としても当院としても、数分の時間をかけ、ゆっくりと丁寧に取り組むことを一つのモットーとしています。

ゆっくり丁寧にすれば、それだけ痛みを減らせます。麻酔はただ打てばいいわけではないのです。

麻酔の手順

①綿棒を使って、最初に表面麻酔を塗る。塗った後は4~5分ほど時間を置く。

綿棒でペタペタ塗ります。少しバナナの風味がします。

  ↓
②2度目の麻酔液を、体温に近い温度(37度前後)にまで温めておく。

常温は20度前後ですので、そのまま注入するとひんやりとして患者さんの痛みにつながります。

そうならないよう、体温に近い温度に温めておきます。

  ↓

③最初の麻酔が効いてきたら、電動麻酔器(電動針)を使い、2度目の麻酔液をゆっくりと注入する。

電動針を使いますが、当歯科医院では、太さ0.2ミリというきわめて細いものを使用しています。

針は細ければ細いほど、痛みを減らせます。

麻酔は「長い時間をかけてそーっと」

麻酔液を注入するとき、当院が気を付けていることが2つあります。

①まず電動針が「刺さる」ようにすること。

針というと、それだけで痛いというイメージがありますが、針は「刺す」から痛みが増すのです。

しかし「刺さる」状態ならば、痛みをある程度減らせます。

まず電動針を、歯茎とほほの境目付近に「置く」ように固定し、少し頬を持ち上げます。

すると針が自動的に「刺さる」のです。

このとき針には、歯科医師の指先の圧力がかかっていないので、その分の痛みを減らせるのです。

②もう一つは、麻酔液を注ぐ圧力を、低く一定に保ち続けること。

せっかく指圧をかけずに針が「刺さって」いるのに、そこに液体をどっと注入したら、圧力が高まって痛みの原因となります。

「短い時間でギュッと」いくよりも「長い時間をかけてそーっと」いくほうが痛みは少ないです。

ですから圧力の低い状態を保って、また時間をかけます。
 
先日、こうして麻酔をかけた女性の患者さんには、「『何かが触れたような感覚』はあるが、痛みはない」とおっしゃっていただきました(※感じ方には個人差があります)。

こうして、大きな痛みもなく麻酔が効いたのを確認してから、様々な歯科治療へと進んでいきます。

<これを書いた人>

上田 昭彦(うえだ・あきひこ、Akihiko UEDA)

1955年12月佐賀県武雄市生まれ。いったん理工系の大学に入るも中退し、82年福岡歯科大卒、同時に歯科医師免許を取得。92年歯学博士号を取得(九州歯科大)。同県鹿島市や那覇市での勤務を経て、88年6月に鳥栖市に「うえだ歯科医院」を開き、現在に至る。