あまり知られていませんが、当院では「訪問診療」も行っています。
「訪問診療」とは、院長と歯科衛生士が直接お訪ねして、出先で診療させていただくことです。
かれこれ15年ほど実績があり、近年は週3回くらいの割合で、近隣の介護施設などを回っています。
介護施設で寝たきりになってしまった方。
お身体が不自由で、あまり外出ができないご高齢の方。
こうした方々は、歯医者に行きたいと思っても、自分の意思で気軽に行けないことが多いです。
すると、歯が痛くなっても、歯がぐらぐらしても、我慢して抱え込んでしまいます。
また、正しい歯磨きができなくなったり、入れ歯を外してそのままにする方もよく見かけます。
そうした積み重ねで、徐々に虫歯や歯周病を悪化させてしまいます。
それを放置したら、いずれ大きなしっぺ返しになってくるのは明らかです。
歯周病や虫歯対策に、年齢も性別も、身体障害も要介護の度合いも関係ありません。
子どもからお年寄りまで、健常者から障害者まで、どんな方々にも平等に必要なのです。
訪問診療では何ができるの?
「訪問診療」では、施設やご自宅にいながらにして、治療を受けることができます。
治療器具と薬品一式を持ち運びして、患者さんが指定した先にお伺いします。
口の中のお掃除、入れ歯のケア、抜髄、抜歯――。
歯医者でふだん行っている大半のことは、出先でもできます。
寝たきりになっても、足腰が弱くなってしまっても、歯は死ぬまで必要です。
いくつになっても、歯のケアを忘れてはいけません。
また、きちんと歯をもって、食べ物を噛むことが、認知症の予防にも役立ちます。
むしろ、高齢になればなるほど、健康な歯は必要になってくるともいえます。
月曜~土曜の診療時間内なら原則的に受け付けています(予約は必須。日時は要相談)。
歯医者に行きたいけど行けない――そんなときに当院の「訪問診療」を使ってください。
寝たきりになっても、足腰が弱くなっても、「訪問診療」を受けて健康な歯を維持しませんか。
こんな患者さんがいらっしゃいました
80歳代の女性。介護施設で寝たきりの生活を送っておられた患者さん。
歯をほとんど失い、食事はほとんど流動食でした。
今だから言えますが、ほとんど気力がなく、いつもふさぎ込んでおられました。
こちらが話しかけてみても反応なさらず、会話などほとんどしない方でした。
その患者さんに入れ歯を作って差し上げました。
通常の食事ができるようになったわけですが、半月か1か月程度で変化が現れました。
食事の時に「おいしい」と答えるようになり、笑顔が見えるようになりました。
何より、ものを噛むと頬の筋肉を動かすので、表情が豊かになります。
そして次の訪問の時、髪の毛をセットしたり、口紅をつけられたりするようになったのです。
身だしなみへの配慮が、きっとよみがえったのですね。
このように、診療によって歯が健康になると、日常生活の意識が変わります。
それは、若くて健康な方だけでなく、寝たきりの方やお身体が不自由な方でも同じことなのです。
そうやって明るい生活を取り戻せるようになることが、私たちの願いであり、仕事です。