当院は、「予防」を重要なテーマとして取り組んでいます。
何も症状が出ていなくても、定期的に来院していただき、口の中をチェックするのです。
もし異常があればすぐに見つかり、早い段階で手を打てます。「健康診断」と一緒です。
歯医者さんは、歯が痛むときだけ行けばいいや、などと思っていませんか?
患者さんが「痛い」といって来られた場合、私たちは痛む部分を優先して治療しなければなりません。
その時点では、ほかの悪い部分には手を付けられないのです。
つまり有事の時だけ歯医者に行っても、解決はしません。平時からの予防が必要なのです。
ではいったい何を予防するのか――端的に言うと、それは「虫歯」と「歯周病」です。
そもそも「虫歯」とは? 「歯周病」とは?
「虫歯」と「歯周病」は、歯の二大疾病です。しかし二つは根本的に違います。
「虫歯」(「齲蝕(うしょく)」ともいう)とは、虫歯菌(※1)が作りだした酸によって、歯が溶かされることです。
虫歯菌は、口に入ってきた糖分を原料に歯垢(プラーク)を作り、そのなかで酸を作り出します。
酸が蓄積すると、やがて歯は溶かされていくこととなります。
「歯周病」(「歯槽膿漏」ともいう)とは、歯と歯肉の間の隙間に挟まった歯垢のなかで歯周病菌(※2)が増殖し、歯肉や骨が破壊される病気のことです。
歯肉の奥深くで増殖するので一見わかりにくいですが、歯本体を支える構造物全体が脅かされるほか、深刻な口臭の原因にもなります。
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(※1)虫歯の原因菌は数種類で、ミュータンスレンサ球菌と総称。ミュータンス菌ともいいます。
(※2)歯周病の原因菌は数百種類あるといわれています。
ヒトコトでいうと、「虫歯」は表面から歯が溶けていく病気です。
一方「歯周病」は、歯肉や歯槽骨、歯根膜などが、歯肉の奥深くから破壊されていく病気と言えます。
虫歯や歯周病が悪化する原因は、例えば不十分な歯磨き、食習慣、ストレスなど、様々ありますが、
歯垢(プラーク)や歯石が原因の拠点となっています。
ですからこれらを毎日きちんと取り除くことが、日ごろからの主な対策といえます。
そのためにも、歯医者の力を借りながら、こうした歯垢や歯石を落としていく努力が必要です。
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毎日歯磨きしても安心できない
「歯磨きは毎日しているから大丈夫だよ」。そうおっしゃる方もおられるでしょう。
でも当院で歯周病や虫歯が見つかる約7割の方は、毎日歯磨きをしているとおっしゃいます。
毎日していても、歯周病や虫歯になってしまうのです。
なぜかというと、原因を完璧に払拭する「正しい歯磨き」をできる方は少ないからです。
患者さんは歯磨きの専門家ではありませんから、どうしても、磨き残しや磨き忘れが時々出ます。
これが少しずつ重なって、歯垢が蓄積していくことで、虫歯や歯周病の原因菌が増殖していきます。
特に歯垢が、歯と歯肉の狭い隙間(歯周ポケット)に少しずつ入り込んでいくと、とても厄介です。
こうなるともう歯磨き程度では落ちなくなり、そのなかで歯周病菌がどんどん増えてしまうのです。
特に、不規則な飲食、たばこ、精神的ストレス、薬の服用……などは菌を活発にさせる原因です。
さらには歯ぎしりや食いしばりといった無意識のクセも、歯周病を悪化させるといわれています。
お気づきでしょうか? 歯周病や虫歯を悪化させるリスクは、世の中の大半の方がお持ちなのです。
決して他人事ではないのです。
それでも、定期的に通っていただいている患者さんは、必ず私たちが異常を見つけます。
でも歯医者にほとんど通っていない方は、まず見つけられません。
「歯周病や虫歯なんて私は関係ない」と思っておられた方ほど、症状が重い傾向にあります。
事実、当院がやむを得ず抜歯した患者さんの約半数が、1年以上、歯医者に来ていませんでした。
わたしは大丈夫だよ、などとたかをくくらずに、ぜひ検診を受けてみませんか。
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