歯についたヤニ、茶渋の取り方

「歯石は取らなくていい。ヤニ取りだけしてくれ!」
時々ですが、こんなことをおっしゃる患者さんがおられます。

美しかった歯の色を、いかにも不健康な茶色や黄色に変えてしまう「ヤニ」「茶渋」。
患者さんにとっては、ある意味、虫歯や歯周病よりも悩ましい存在なのかもしれません。

しかし結論から申しましょう。そんなことはオススメできません。
「歯石と一緒に取り除くこと」を、当院では目指しています。

そもそもヤニとは? 茶渋とは?

そもそも、ヤニや茶渋によって歯の色が変わってしまうということはどういうことなのでしょう?

「ヤニ」は、たばこに含まれる発がん性物質「タール」が原因となっています。
茶褐色で、ベトベトしているので、歯に付着しやすいのが特徴です。

「茶渋」は、お茶などに含まれる「タンニン」(渋みを感じさせる化合物の総称)が原因です。
歯に付くと黄ばんで見えますが、カップなどに付着すると茶色っぽいシミを作ってしまいます。

これら原因物質の色素が歯にふれ、その後十分に取り除けずに色が変わってしまうのです。
こうした状態を、専門的には「色素沈着」といいます。

ここで注目すべきなのは、原因物質の色素が「歯の表面にくっつく」のではないということ。
色素が「歯の中に沈みこんでいってしまう」ということです。

中にまで沈み込んでしまったら、もう患者さんご自身ではどうにもできません。
歯医者の専門的な手法で取り除くしかなくなるのです。

そこで必要になるのが「PMTC(専門的機械的歯面清掃)」という手法。
それでも効果が薄いときは「ホームホワイトニング」へと進んでいきます。

PMTCで色素を落とす

PMTCとは「専門的機械的歯面清掃」、いわばプロ仕様の歯磨きです。

歯の表面に重曹を吹き付け、それによって、ガンコに「沈着」していた色素を落とせます。
個人差はありますが、これによって歯をかなり白くすることができます。

その色素落としと並行して超音波の器具を使うので、たまった歯石を落とすことができます。
つまりPMTCは、歯周病対策としても有効なのです。

そもそも、ヤニや茶渋の色素は、歯の表面よりもむしろ、歯石の方に付きやすいのです。
ですから歯石を取り除く作業は、色素を取り除くためにも必要なことなのです。

むしろ、歯石を取らずに色素だけ落とすというのは、ナンセンスなのです。

ヤニや茶渋は「宿命」

「毎日歯磨きしていたのに、歯周病になった」と嘆いている患者さんは多いです。
それと同じく「毎日歯磨きしていたのに、歯が黄ばんだ」という患者さんも多いです。

そこで「磨き方が悪かったからだ」と、いっそう力を込めてゴシゴシ磨く方がおられます。
しかしそれは完全に逆効果です。歯の表面が傷つき、さらに色素がこびりつきやすくなります。

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確かに、歯磨きの仕方が適切ではない方もなかにはおられます。
しかし歯磨きは、リスクを減らすことはできても、「完全にゼロできる」わけではありません。

毎日どれほど念入りに歯磨きをしていても、現実的に歯石を100%取り除くことはできません。
それと同じく、ヤニや茶渋も、現実的に100%は落とすことはできないものです。

それは、患者さんご自身の努力ではどうにもできないことで、すべからく「宿命」なのです。
だからこそ、虫歯も歯周病も、ヤニも茶渋も、定期的に歯医者を受診することがベストなのです。

「ヤニ取りだけ」には保険は適用されない

冒頭、「歯石は取らなくていい。ヤニ取りだけ!」とおっしゃった患者さんをご紹介しました。
しかしこのご要望に沿うと、健康保険がきかなくなってしまいます。

病院が健康保険を適用するには、「健康を増進させる」ことが条件となっているからです。

例えば「歯石」は、それだけで、虫歯や歯周病の原因となってしまいます。
ですから歯石を取り除くことは「健康を増進させる」と解釈でき、保険を適用できるのです。

一方「ヤニ」「茶渋」は、それ自体だけで何かの病気が起こる可能性は低いものです。
つまり「健康を増進させる」という解釈が成り立たず、それだけでは保険を適用できないのです。

しかし歯石を取り除かないということは、虫歯や歯周病のリスクを放置することを意味します。

だからこそ、ヤニや茶渋を取り除くのは、歯石を取り除くのと「セット」にすべきです。
そのほうが、今後の歯の健康のためにいいに決まっています。

<これを書いた人>

上田 昭彦(うえだ・あきひこ、Akihiko UEDA)

1955年12月佐賀県武雄市生まれ。いったん理工系の大学に入るも中退し、82年福岡歯科大卒、同時に歯科医師免許を取得。92年歯学博士号を取得(九州歯科大)。同県鹿島市や那覇市での勤務を経て、88年6月に鳥栖市に「うえだ歯科医院」を開き、現在に至る。