歯科医師としてお伝えしたいこと。
親御さんには、ご家庭で子どもさんと一緒に「親子歯磨き」をしていただきたいと思います。
「歯磨きなんて自分でするものでしょ」とおっしゃる親御さんもおられますが、それは違います。
年端も行かない子どもさんが、自発的に「虫歯予防」などという意識を持つことは、歯科医師としての経験上、できないと言えます。
とにかく幼いころに歯磨きを習慣づかせること。これに尽きます。
そこに条件はありません。逆に、「虫歯を予防するため」という意識は後付けで構わないのです。
時々「子どもが嫌がるから」とやめる親御さんもおられます。しかしそれでやめてはいけません。
逆に、親御さんがその気になって続ければ、たいていの子どもさんはついてきます。
子どもが幼いころは、とにかく「親のリーダーシップ」が必要です。
そこで子どもさんが小学3~4年生くらいまでは、親御さんに手伝っていただきたいのです。
歯科医師として責任をもって、記事を書きました。
以下の「親子歯磨き」を、ぜひご家庭で実践してください。
「親子歯磨き」のやりかた
①まずは子どもさんに自分で磨かせる
子どもさんに毎日2回、歯を磨く習慣をつける必要があります。
これはそのための「儀式」です。正しい磨き方は、とりあえずは度外視します。
お子さんがどれだけ一生懸命に磨いても、おそらく完璧には磨けていません。
そこで自分で磨いたあとは、親御さんの登場です。
②仕上げに、親御さんが「らせん磨き」をしてあげること
くるくると、横に向かってらせんを描くように、歯ブラシを動かしてください。
ここで大事なことは、「ゴシゴシと強くこすらないこと」、「歯茎に毛先を当てること」。
子どもの歯は、大人の歯に比べて隙間が少ないので、汚れがたまりにくいのです。
ですから、歯の表面についた汚れは、比較的簡単に落ちていきます。
一方で、汚れは歯茎にたまりやすいので、毛先を歯茎に当てることが大事です。
「子どもが痛がるから」とためらう方もおられますが、痛くない程度でいいので当ててください。
歯磨きの痛みを減らすには、毛先が丸い「ワンタフト」という歯ブラシをおすすめしています。
市販はしておらず、当歯科医院で、有料にてお配りしています。
永久歯に生え変わったら?
大人はもちろん、永久歯が生え始めた子どもさんも「正しい歯磨き」を身につける必要があります。
小学生高学年にもなると、もう親御さんには頼れません。
正しい歯磨きの第一歩とは何でしょう。
それはズバリ、「歯と歯茎の境目に毛先を当てること」。
大人になると、歯と歯茎の境目にはより汚れがたまりやすくなり、菌が繁殖しやすくなります。
それがやがて、歯周病を引き起こす原因となります。
ですからここに毛先を当てて、汚れを落とすことが、何より大事なのです。
歯磨きの時、ゴシゴシと力を入れて磨くと、なんだかすっきりした気分になりますよね。
でも残念ながら、それは自己満足です。
いくら力を入れてゴシゴシやるだけでは、歯と歯茎の間の汚れまでは落ちません。
むしろ、やりすぎると歯の表面が傷ついて削れてしまい、文字通り「身を削る」ことになります。
歯と歯茎の境目に毛先を当てる。大人になったら、これを意識してください。
関連記事:大人向け~正しい歯磨きの方法
<これを書いた人>
上田 昭彦(うえだ・あきひこ、Akihiko UEDA)
1955年12月佐賀県武雄市生まれ。いったん理工系の大学に入るも中退し、82年福岡歯科大卒、同時に歯科医師免許を取得。92年歯学博士号を取得(九州歯科大)。同県鹿島市や那覇市での勤務を経て、88年6月に鳥栖市に「うえだ歯科医院」を開き、現在に至る。